夜があけて -ももたさんの離婚体験記
娘が高校に入学した夏、離婚を決めた。もちろん寝耳に水、青天の霹靂ということではなかった。いつからか夫婦仲は少しずつずれ、お互いを見なくなってきていた。だが夫婦とはずっと仲がよく見つめ合っていくものではなく、お互いに適度な距離を保ちながら無関心となり家族へと変わっていくものなのだろうと、漠然と思い過ごしていた。
そんな中突然裏切りがあった。お盆に実家に帰ると言って出かけたはずが、全然違っていたのだ。その後も無断外泊が何回か続いた。心の中はざわざわしていた。ちゃんと話さなければいけないと思い、娘が寝るのを待ち、何回も問い詰めた。その度におこりながらだんまりをされ、何も進展しない状態が続いた。
思い返せばいつもケンカの後はだまり自分の殻に閉じこもり、何も話し合いなどできたことがなかった。今まではそんな状態にお互い疲れ、また元に戻るという繰返しをずっと続けていた。だが今回は戻れなかった。これ以上話し合うことができない信頼のできなくなった人と、一緒に暮らせないと思ってしまったのだ。
「何が起こっているのか話し合えないまま、これ以上一緒に暮らせない。」と告げ、相変わらずだんまりの彼が怒りに任せ、「じゃあもう終わりだな。」と言い、離婚が決まった。学生時代から20年いたわりには、なんとあっけないことかと思えた。これで本当にいいのか、後悔しないのか分からず、「本当にこのままでいいの?」と2回ほど彼に聞いてみたが、「俺は何も話すことはない、気持ちは変わらない。」と言われ、私にも決心がついた。話し合えない、それにより信頼のできない相手と、この先一緒にいるのは私にはムリだと思えたのだ。
しかし決めてからも、何度もこの決断で良かったのだろうか…と心が毎日揺れていた。実際に離婚が成立したあとは、大きな大きなものが自分の中から消え、心の中にぽっかりと穴があいたようだった。娘には涙を見せないと誓っていたので、昼間は明るく普通に振る舞い、夜1人になると涙自然とこぼれ、止まらないという日々が続いた。しかし、明けない夜はないという言葉の通り、涙いつか全く流れなくなり、生計を担う世帯主にならなければいけないという自覚がわき、パートでしていた仕事を増やし、日々仕事に打ち込んでいった。
不思議なことに仕事に打ち込みだすと、今までなんとなくやっていた仕事がおもしろいと思えるようになった。仕事をしている間は全く考えなくなり、次第にそんな時間は増えていった。乗り越えるために1番必要だったのは時間だったと思うが、稼がなければいけないという気持ちで打ち込んだ仕事も大きかったように思う。そしてそれ以上に一緒に過ごした娘の存在がかなり大きかった。この時期は自分のことより、娘の笑顔を守ることを1番に考えて行動していた。
パパがいなくなったことで、大きな喪失感を得ていた彼女から笑顔が消えてしまいそうだったため、大きな試練を敢えて与えてみることにした。3か月という短い期間だが、留学させることにしたのだ。たまたま学校のサポートプログラムがあり、格安で行けることがわかったので、それに応募させたのだ。
娘が留学に行き、私は初めて1人で暮らす経験をした。この時期に自分を労り、たくさんの気持ちに踏ん切りをつけたような気がする。3ヶ月後に再会した娘もまた、1人異国の地で過ごすという経験をし、大きな自信をつけて帰ってきた。今までと違い、彼女の笑顔にはたくましさが増していた。その笑顔を見た瞬間、この決断は全て間違ってなかったのだ!!と確信することができた。
あれから数年経ち、高校生だった娘も大学生となりもうすぐ卒業する。あのあと元々好きだった語学に磨きをかけ、大学在学中に1年間の奨学金プログラムに応募し留学してきた。どんどんたくましくなっている娘の姿に勇気をもらえている。そして私はこの数年を駆け抜け、今は更年期真っ只中である。ずっと働くつもりだった仕事は、娘の留学を機にバーンアウトしてしまい、空の巣症候群にもなった。娘のいない1年をじっくり過ごし、次の人生のスタートに向けていろいろ考えていきたいと思っている。
がむしゃらに突き進んでいたあの日々よりも、今の方がずっと心が穏やかである。また、娘はパパともずっと良い関係を築いている。「2人で自由に会いなさい。パパとママは一緒にいられなくなったけれど、あなたとパパとの関係は全く自由で別のものだから。」と、あの時言って良かったと思う。最初は娘と彼が会う日、帰ってくる時、心が乱される気持ちを感じていたが、時間がたち今は笑って「行ってらっしゃい、楽しんで。」と送り出し、その日の出来事を普通に聞けるようになった。
今離婚をするか悩んでいる方はたくさんいると思う。離婚は結婚の3倍大変と言われているが、実際は5倍大変だと感じた。傷つき疲れ果てている時に法律手続きが襲いかかる。さらに今までのんびり暮らしていたなら、家計を背負う世帯主となり働き稼がねばというプレッシャー。こんな状態を1人で抱えこまないでほしい。
親、友人、信頼できる人、誰でもいいので話し、自分の状態をわかってもらった方がよい。親身になって聞いてくれる人、アドバイスをくれる人、助けてくれる人は必ず出てくる。だから周りにSOSを出しながら、少しずつ進んでいってほしい。人生の大きな決断、どれだけ悩んでだしたであろう決断に、絶対間違いはないはずだから。
たとえどんなに辛く真っ暗に感じても、いつかは明けてくる。そしてそんな経験をしたことは、いつか生きていく上での強さになる。人生に無駄なことなど何もない。また心から笑える日がくるのを信じて、少しずつ前に進んでいってほしいと願っている。